大自然に囲まれたミッションスクール
小田原駅から箱根登山鉄道に乗って約く50分。その終点にあたる箱根町の強羅は、富士箱根伊豆国定公園の中にあり、首都圏から気軽に行ける静かな温泉郷として、古くから知られています。付近には美術館や公園が点在し、強羅駅は芦ノ湖方面に向かうケーブルカーの始発駅にもなっています。などと、まるで観光ガイドのような書き出しになってしまいましたが、このページはもちろん旅の手帖ではなく私学手帖。強羅について書いたのは、今回紹介したい学校が、まさにこの場所にあるからなのです。カトリック系のミッションスクール、白百合学園。全国に姉妹校を持つこの学園の中で、もっとも若く、そしてもっとも自然環境に恵まれた学校が、強羅にキャンパスを構える函嶺白百合学園です。標高550メートル。今回の取材で強羅の駅に降りたとき、まず感じたのが空気の違いでした。自然環境の良さを自慢する私学は多いものの、函嶺白百合はちょっと別次元というか、こんな山の上に女子校があること自体、なんだか不思議な気がします。
函嶺は白百合女子学校の疎開先だった
校名の函嶺(かんれい)は、箱根の古い呼び名。太平洋戦争中に白百合女子学校の疎開校としてこの場所に作られた強羅疎開学園が、その後、湘南白百合学園の分校時代を経て1949年(昭和24)年に独立、函嶺白百合学園となりました。現在は、小学校から高校までの一貫校。生徒たちの多くは、毎日ふもとから登山電車に乗って通学しているそうです。初夏には路線脇に一万株のアジサイの花が咲き乱れ、秋にはみごとな紅葉が観光客の目を楽しませる箱根の登山電車。そんな季節の移り変わりを毎日感じながら通学できるというのは、考えてみればずいぶんぜいたくなことです。
「登山電車通学」は珍しいかもしれませんが、もう小学校の時からずっと乗っているので・・」と話すのは、インタビューに応じてくれた高校生。「毎日いい景色の中を通学するのは楽しみ」とのことですが、同時に小田原から強羅までの50分間は「学習するにもひと眠りするにもちょうどいい時間」だそうです。
この制服には短いスカートは似合わない
こうした環境の良さとともに、少人数制による行き届いた教育とアットホームな雰囲気も、函嶺白百合の特徴です。生徒数は中高あわせて約350名。「生徒どうしがみんな顔なじみで仲が良く、家族みたいなかんじ」とのこと。上級生に対して「お姉さま」と呼びかける古くからの習慣があるのも、この学校ならではです。卒業後は全体の3分の1の生徒が白百合女子大学に進学。その他4年生大学にも、毎年安定した進学実績を残しています。そんな彼女たちの制服は、クラシカルなセーラー服。全国の白百合学園で共通の、胸元に百合の校章がついた3本ラインのセーラーです。冬にはセーラー服の上に重ね着するブレザータイプのハーフコートも用意されています。
左袖に「SP」の文字(白百合学園の守護の聖人、聖パウロの頭文字)がはいった紺色のカーディガンは、函嶺白百合のオリジナル。夏服を着る季節でも天候の変化で肌寒い日がある強羅では、このカーディガンが一年を通して活躍するそうです。清楚なデザインで昔から人気のある白百合のセーラー服は、函嶺白百合の生徒たちも気に入っているとのこと。しかし制服のデザインは共通でも、その着こなしは東京や神奈川の姉妹校とはひと味違った雰囲気です。全体におっとりしていて、短いスカートをはいている生徒も見かけません。彼女たち自身「この制服には短いスカートは似合わない」と考えているそうです。
似合うかどうかは関係なく、とにかくウエストを折り込んでミニスカートにしてしまう近ごろの制服の着こなしですが、函嶺白百合では、そうした流行に流されることなく、自分たちのスタイルを守り続けています。校内で今でもふつうに交わされている「ごきげんよう」の挨拶とともに、少し古風にさえ見えるそんな生徒たちの姿に、かえって新鮮な印象を受けました。
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